相続人不存在の場合の特別縁故者への財産分与

戸籍の記載上、相続人が見当たらない場合や、相続人全員が相続の放棄をした場合に、被相続人と特別の縁故があった者が家庭裁判所に申し立てることによって、相続財産の分与を請求することができる制度があります。
被相続人と特別の縁故があった者とは、被相続人と生計を同じくしていた者(内縁者等)や被相続人の療養看護に努めた者などをいいます。
特別の縁故があったかどうか、分与される財産の割合(全財産が分与されるとは限りません。)については、家庭裁判所の判断によります。
具体的な手続きはコチラをご覧ください。

特別縁故者に該当するとされた判例

内縁配偶者が特別縁故者と認められ、居住用不動産の分与を受けた判例
東京家裁昭和38年10月7日審判
千葉家裁昭和38年12月9日審判
岡山家裁昭和46年12月1日審判
*いずれも子はいないが、20年以上の内縁関係があり、分与の対象となった不動産に居住していたケース。

内縁配偶者が特別縁故者と認められ、相続財産の分与を受けた判例
名古屋家裁平成6年3月25日審判
*国籍が異なる被相続人と婚姻しようとしたが、婚姻届が受理されなかった。
その後も内縁関係を継続し、生計を共にして、一男五女をもうけたが、子どもたちは被相続人から認知がされていなかったため、相続人が不在となったケース。

事実上の養子が特別縁故者と認められ、相続財産の分与を受けた判例
大阪家裁昭和40年3月11日審判
熊本家裁天草支部昭和43年11月15日審判
*いずれも養子縁組はしていなかったものの、事実上の養子として被相続人と生計を共にしてきたケース。

被相続人から報酬を得て稼働していた看護士らが特別縁故者と認められ、
相続財産の分与を受けた判例

神戸家裁昭和51年4月24日審判(判例時報822号)
*正当な対価を得て稼働していた看護士は特別の事情がない限りは、民法958条の3にいう被相続人の療養看護に努めた者とはいえず、したがって、原則としては特別縁故者とは認められないが、対価としての報酬以上に献身的に被相続人の看護に尽くした場合には特別の事情がある場合に該当し、例外的に特別縁故者に該当すると認められたケース。

上記の他にも、(相続人ではない)親戚が特別縁故者と認められているケースは多々あります。
もしかしたら?と思いあたる場合はぜひ一度ご相談ください。

特別縁故者への相続財産分与の申立

1.申立人

特別縁故者

2.管轄裁判所

被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所
(相続財産管理人選任申立事件の係属する裁判所)

3.必要書類

□申立書
□申立人の住民票又は戸籍の附票
□収入印紙800円
□郵券

*相続財産管理人の選任がされていない場合は、先に相続財産管理人の選任申立を行う必要があります。
この場合は、別途必要書類がありますのでご注意ください。

相続財産管理人の選任手続きはコチラ

相続人不存在の場合の手続きの概要

 ① 利害関係人又は検察官の請求による相続財産管理人選任の審判及び選任公告

誰かが申立をしなければ、手続きは当然には行われません。
被相続人の債権者、特別縁故者、不動産の共有者は利害関係人に該当します。

 ② 相続債権者及び受遺者に対する権利申出の催告を公告

相続財産管理人が公告を行います。2か月以上の待機期間があります。

 ③ 相続財産清算・弁済

ここで残余財産が残らなければ、手続きは終了となります。

 ④ 相続人捜索公告

ここで相続人がでてきた場合には相続人への財産分与が行われ、手続きは終了となります。
催告期間は6か月以上あります。

 ⑤ 特別縁故者への財産分与の審判

相続人が出てこなければ、特別縁故者が財産分与の申立を行うことができます。
*財産分与を希望する特別縁故者はこのタイミングで申立を行います。
その結果、裁判所が分与を認めてくれれば、相続財産の分与を受けることができます。

 ⑥ 不動産持分の共有者への帰属

相続人も特別縁故者もいない場合において、被相続人の相続財産の中に不動産の共有持分がある場合には、その不動産の共有持分は他の共有者に持分割合に応じて帰属します。

 ⑦ 国庫への帰属

残った相続財産は全て国庫に帰属します。
相続財産を国庫に帰属させて、相続財産管理人の仕事は終了となります。

ご予約はお電話・フォームから 06-6940-4815

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